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日本歯科大学 教授
口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長
2024年3月10日
4:40:01
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一般歯科医師 | 38,500円(税込35,000円) |
日本人の多くはおおむね10年ほどの自立を失った期間を過ごしている。演者は、外来受診の機会を奪われたこの時期の患者を多く診療している。この時期とこの時期に向かおうとしている高齢者における口腔の問題に、この講演ではフォーカスしたいと思う。
現場で起こっていることをまとめると、運動障害性咀嚼障害への配慮の欠如と自立を失った期間における歯科医師の不在問題である。
咀嚼機能にもっとも重大な影響を与えるのは、歯の欠損に基づく、咬合支持の喪失である。咬合支持の維持・回復には、歯を残すことと、補綴治療をすることであり、口腔インプラント治療は大きな力を発揮する。一方で、抗うことができない口腔の運動機能の低下によって起こった咀嚼機能の低下においては、運動機能に配慮した治療方針を検討しなければならない。口腔の運動機能の重症化に伴い、咬合支持の存在が咀嚼機能に与える影響は相対的に低下する。すなわち、咀嚼機能にとって、咬合支持の存在はなくてはならないものから、あったほうが良いものになり、なくても良いものに変遷する。咬合支持の改善に偏重した歯科治療方針の策定は大きな問題を残す。さらに、歯科医師は医療者の中で要介護高齢者に最も冷たい職種と言って良い。多くの歯科医療は、外来受診が可能な時期においては深く関与するものの、外来受診が途絶えると、そのままに放置する。自立を失った10年もの長きの間、患者の口はどう管理され、どのように崩壊していくのか、もし、多くの歯科医師が観ることがあれば、歯科医療が大きく変化するものと考える。医療が疾患モデル一辺倒から生活モデルを取り入れたように、歯科医療においても大きなパラダイムシフトが起こることを期待する。