鶴見大学歯学部 探索歯学講座 教授
2019年7月14
4:24:59
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口腔細菌叢は腸内細菌叢の1000分の1に満たない小さな存在である。それにもかかわらず健康に大きく関与している。数は少なくても健康に大きな影響を与える病原体に対する新しい概念が米国で提唱された。キーストーン病原体(keystone-pathogen)仮説である1)。細菌が病原性を発揮する理由の一つは菌体から数多くの膜小胞(外膜小胞または膜小胞)を分泌することである。キーストーン病原体は、ひとつの細菌から際限なく膜小胞を放出する。その膜小胞にはきわめて有害な酵素が含まれており、嚥下や菌血症によって全身に拡散している。
常在細菌叢の構成は食事や栄養状態に関連する。旧石器時代から現代まで人類の食料は大きく変化した。食品加工がすすみ、味を向上させるために食品の低分子化が進行した。その結果、低分子のアミノ酸と糖類を栄養源とする口腔の常在細菌が増殖している。キーストーン病原体の増殖も摂取する食品に関係している。そのために歯を毎日磨かないと健康を維持できない状況になっている。
栄養と常在細菌叢が生活習慣病と深く関わっているので、社会を脅かす生活習慣病の多くは、地域に密着したかかりつけ歯科医院の努力で予防可能である。地域の歯科診療所が歯科治療と栄養指導を同時に行い、さらに3DSなど細菌置換技術を駆使してキーストーン病原体を除菌する時代がきている。本セミナーではそのために必要な理論と実践方法を解説する。
1)Hajishengallis et al. The keystone-pathogen hypothesis. Nat Rev Microbiol. 2012; 10: 717-25.