鶴見大学歯学部 探索歯学講座 教授
2020年7月5日(日)
4:25:33
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一般歯科医師 | 38,500円(税込35,000円) |
口腔保健と精神疾患を含む全身的な疾患の関係についての基礎と臨床の研究が世界的に進行し、両者の関係性のエビデンスが日々蓄積されています。また、歯周病が引き起こす全身疾患に関するショッキングなテレビ番組や特集記事が組まれることも多くなりました。
歯科医と歯科衛生士は口腔細菌の制御と歯科補綴に関して独占業務を担っています。そのため人々の歯科医療への期待は、認知症、うつ病の発症を予防し高齢になるまで健康な生活を確保することへと変化するでしょう。つまり、これからの歯科医はプライマリーケア医をめざすことが大切なのです。プライマリーケアには5つ理念があります。それは近接性、包括性、協調性、継続性、責任性の5つです。
このうち私たちが解決すべき課題は「包括性」です。「包括性」とは通常は内科開業医を中心とする家庭医が行うCommon disease を中心とした全科的医療を指します。歯科医の場合は内科医とは違い、生活習慣病を中心とした全科的予防医療を目指すことになります。全科的予防医療とは歯肉炎、内臓脂肪など体内で慢性炎症を引き起こしている病巣や要因を日常的に除去することです。2005年政府与党医療改革協議会は「健康と長寿は国民誰しもの願い」てあり、今後は、治療重点の医療から、「疾病の予防を重視した保健医療体系へ」と転換を図っていくことを宣言しました。翌年(2006年)には「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」を成立させ、この法律に基づいて後期高齢者医療制度と全科的予防医療として特定健康診査・特定保健指導の2つの制度が創設されました。開始当初(2008年)は歯科とは無縁だったこの全科的予防医療の事業にも、10年後の2018年から歯科の項目が導入され、歯科医による特定保健指導に対する研修受講義務が免除され、さらに医療保険組合による歯科関係の活動が後期高齢者医療制度に対するインセンティブとペナルティ(報酬と罰則)の対象になりました。特定保健指導を実施している歯科医院はまだ少数です。しかし、特定保健指導を実施する歯科医院が出現したことによって、歯科医院が全科的予防医療を担う一次予防の拠点であり、歯科医と歯科衛生士がプライマリーケアを担う医療職であることを社会に示した意義は大きなものがあります。本講演では、歯科医と歯科衛生士がめざすべきプライマリーケア医への道について解説いたします。